第一回「ネタ作りで心がけている事など」 筆者:もっと変なP

では最初にネタ作り、創作に入る前の心構えといいますか、おまじないのようなものから。
今の時代、声優や歌手に大金を積まなくても音声合成のおかげで声を付ける事ができます。また、絵心が無くてもMMDやなんとか機のおかげで3DCGやキャラ絵を作ることができます。良い時代になったと、しみじみ感じてください。これが後々創作に影響を及ぼします。その時に実感が湧くことはあまりありませんが良い時代になったと噛み締めることは重要です。

まずはキャラ設定から
二次創作において公式設定との折り合いは楽しくも悩ましい事です。ですが二次創作は自由なので自分が面白いと思ったなら公式設定を全て無視するのもアリです。自分は設定厨なので公式設定が多ければ多いほど安心するタイプです。その方が公式設定に沿った二次設定を作りやすいからです。
では公式設定に沿った二次設定とはどういうものか。桃音モモを例として、モモは甘い物が好きです。これを踏まえて二次設定を作るならどうするか。辛い物に対してはどうか。辛い物も好きか、それとも苦手か。ここで辛い物は苦手とすると自分は納得できます。辛いのが好きよりも苦手な方がモモっぽい。
これが公式設定に沿う、という事です。そして同じ要領で二次設定をとにかくたくさん作ります。こんなの作っても物語に使わないし役に立たないだろっていうのまで作りまくります。設定は多ければ多いほどキャラが動きやすくなるのです。
設定に縛られて動きづらくなるんじゃないかと思うでしょうがそうなったらその時にその設定を無視したり切り捨てたりすればいいだけの話です。設定は多いに越したことはありません。二次設定を作るときに押さえておきたいのがキャラ一人一人にそれぞれ違う主義や行動理念があることを表現できるようにしておくこと。物語を進める段階である事象に対しこのキャラならどう考えどう動くか何を喋るのか、脚本を作る時にスムーズにできるようになります。二次設定を考えるのが難しいと思うなら連想ゲームだと思ってください。途端に楽しくなります。二次設定を豊富に揃えたいなら取材もしましょう。例えば人間そっくりなアンドロイドを登場させる場合哲学的ゾンビ問題は切っても切れない関係です。そういった描写を表現できればフィクションの中のリアリティを向上させることができます。取材は主にgoogle先生に任せてますが。
登場させる人数が決まったら相関図も作りましょう。長編を作る場合、さらに誰と誰に面識があるのかも押さえておく必要があります。

プロットについて
何か最低限でもまとまった脚本を作りたいならプロットを組むのは必要不可欠です。漫画にネームが必要であるように、アニメではコンテを切っているように文章ものはプロットを組まないと話になりません。プロットを組まずに行き当たりばったりで作ると必ずどこかで破綻します。ギャグならその限りではありませんが。
プロットと聞いた途端に難しいイメージを持たれるかもしれませんが箇条書きで時系列順にイベントを並べるだけです。UTAUと共に1話を例として挙げます。

・テトとデフォ子が出会う
・コアをインストールする
・モモがやって来る
・三人娘が「がんばるぞ」と言う

あの話のプロットはたったの4行です。最初はこれだけで良いのです。これに大量に作った二次設定を用いながらキャラに掛け合いをさせ少しずつ引き伸ばしていきます。プロットを組む最大のメリットはなんと言っても伏線を好きなだけ張れることです。これを知ってしまうとプロットを組まずにはいられません。

ネタが浮かばないという方へ
ネタが思い付かないからといって焦ると余計ネタは思い付かなくなります。「行き詰まったかな?」と感じたら一旦ネタ出しは止め、関連動画を楽しみましょう。一通り楽しんだらよく寝てください。別にふざけているわけではありません。人間の脳はよくできていて寝ている間に情報の整理を行います。優先度の低い情報は忘れやすくなり高い情報は覚えやすくなります。関連動画を楽しむとその情報の優先度を上げることができます。
そうやって情報を蓄積しているとある時ふっとアイデアが降ってくるようになります。UTAUと共にに出てくる二次設定でどら焼きネタがありますがこれはアイデアと連想ゲーム両方合わさって生まれました。

テト→ドラえもん
モモ→甘い物が好き
栄一→しるこドリンク→小豆が好き

これらから連想するとどら焼きが自然に出てきます。ネタが浮かばないのなら連想ゲームで数を稼ぐのがネタ作りにおいて重要となります。

パロディについて
ネタが思い付かない、または二次創作初心者ならまずはパロディから入ります。好きな作品やネタがあるならパロディにしましょう。ただしパロディは元ネタがマイナーすぎて視聴者に伝わらなければ面白さが半減しますし誰もが知ってるネタを使うと見飽きたと言われがちになります。全てパロディにして突き抜ける手もありますがたまに思い出したようにさりげなく混ぜるか元ネタが分からなくても問題ないようにアレンジすることでネタの幅を広げることができます。
ニコニコ動画ではある動画をきっかけに同じネタが大量に投下される場所です。ですがネタの強さで本家を超えることはまれです。安易なパロディは思考停止と紙一重です。パロディはどうしてもこのネタを使いたい、このネタが無いと成立しない、という気構えでちょうど良いです。

面白いネタってなんだろう?
ネタの送り手と受け手には思っていたよりかなりの温度差がある事を送り手として肝に銘じています。自分がどんなに面白いと思ったネタでも大抵「それのどこが面白いの?」と言われるぐらい差があります。10人に1人笑ってもらえればまだマシ、とさえ考えてます。一つ言える事は自分が面白く無いと思ったネタで他の方が笑う事は絶対ありえない。結局自分が面白いと思ったネタを出していくしかないのです。
プロの場合、編集がダメ出しをしてくれるのでネタを出すことにひたすら集中できますがアマはそうはいきません。自分のネタに自分でどれだけダメ出しできるか。自分のネタにダメ出しできないとそこで停止してしまいます。実際に動画として表に出せたのと同じぐらいボツになって消えたネタやHANASUがあります。しかし完全に捨て去るわけでは無くアイデア自体は取ってあります。別の形で日の目を見る可能性もあるので。ニコニコ動画ではたまにダメ出ししてくれる人もいるのでコメント機能はありがたいものです。

ボケとツッコミについて
ギャグの基本中の基本であるボケとツッコミ。優れたギャグというものはボケとツッコミのレベルが対等であるものだと考えています。巷のギャグはボケはいいのにツッコミが今ひとつ、というのを良く見かけます。どんなに優れたボケでもツッコミが弱いと1+1がせいぜい1.5ぐらいにしかなりません。優れたボケに鋭いツッコミが入れば1+1が3以上になります。突っ込む力があればなんでもネタになるので普段から軽いツッコミを入れるようにはしてます。UTAUと共に1話でテトがデフォ子に対して歌えるわけ無いだろと突っぱねていますがあれもツッコミの一種です。物語を進める上でツッコミは欠かせません。

推敲について
ある程度脚本ができたら推敲を始めます。推敲は脚本の完成度を上げるために必要な作業です。また作者の好みや個性が前面に出てきます。大切なのはネタを詰め込むだけ詰め込んだあと余計な台詞やネタを極力削ることです。全てのネタを出すとテンポが悪くなってダレますし、HANASUだとそれだけ調声しなくてはならないからです。ネタの総量が100なら90ぐらいに収めます。推敲の仕方が分からないという方は最初は繰り返し読むだけでもかまいません。
そして一つ一つの台詞に対しこの台詞は本当に必要なのかどうかを考えながら読み進めてください。創作で大事なのは設定を全部説明することではありません。想像の余地を残した方が視聴者や読者は楽しめるのです。そして一字一句に集中してください。誤字に気付かないと後々痛い目に遭います。もちろんわざとなら良いのですが(2ch語とか)。それから作者の好みや個性とはどういうものか。

UTAUと共に1話からテトの台詞
「別に、嬉しくなんか無いんだからな」
これは途中まで
「別に、嬉しくなんて無いんだからね」
これとどちらにするか悩みました。

最終的に上を採用したわけですが好みや個性はこういう所で出てきます。とにかく全ての台詞に納得できるまで頑張りましょう。

動画作りについての心構え
必ず字幕を入れるようにしています。「面白いネタってなんだろう?」でネタの送り手と受け手の温度差を書きましたが同様にこのHANASUは自分にしか聞き取れないかもしれない、そう考えているからです。聞き取りやすいとコメントをいただいても、もしかしたらその人だけかもしれない。10人中9人聞き取れたとしても、残り1人は聞き取れてないことになる。字幕を入れないということはその残りの人がネタに触れる機会を失ってしまうと考えるべきです。字幕を入れる事はHANASU技術とは関係無いですしネタを伝えやすくするためにも字幕は必須であると。もう一つは自分がどこまで楽しみたいのかを理解すること。創作は楽しいですが上を目指すとキリがありません。自分のスキルと相談して自分ができる範囲で創作するべきです。
ありがたいことにUTAU界隈は技術が足りなくても頑張った所は認めてくれる雰囲気があるので色々チャレンジでき、創作しやすい環境であると思います。

最後に
長々と書きましたが何か共通点があることに気が付くと思います。とにかく楽しむ事。それもただ楽しむのではなく全力で。何かに感動したならそれを自分の創作に生かす、そんな感性を持ってほしいです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。